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Episode of hospitality

コメ・スタのおもてなしエピソード

ここで云うおもてなしは、表無と書き「裏」を意味します。従って、「哲学」「風」「文化」「本音」「理念」etc…と理解しましょう。 コメ・スタでは普段何気なく表現している裏ワザをご紹介致します。

「レストランのサービス改造マニュアル」渡邊孝著 明日香出版社より抜粋

エピソードI-1 おもてなし編

握手でかわすご挨拶

従業員同士で出勤時や退社時にがっちりと交わされる握手はコメ・スタの名物です。

握手のきっかけはキッコーマンレストラン勤務時代にさかのぼります。お客様からしっかりと手を握られたことでとても元気づけられた私は、その感動を社内で社員同士、共有化できないだろうかと考えました。

まずは、当時の座喜味進支配人と2人で握手をはじめることにしたのです。当初は照れくさくもありましたが、お互いに励まし合いながら、1年間は2人だけで実践。翌年には次から次へと握手の輪が広がり3年がかりで社員、エスコーター(パート、アルバイト)全員が実践するようになり、握手は、無言の相互に元気づけの「気付け薬」と化したのです。

もちろん最初から強制して全員に握手制度を徹底することもできたでしょうが、それでは本当の握手の意味がわからず、形だけの真似で終わってしまったと思います。リーダーみずから実行して見せることの大切さを、この件で実感しました。

お客様との交流を深めていくにはまず、スタッフ全員がきちんとチームワークがとれなくてはなりません。そこで実践しているのが握手作戦。単にコミュニケーションを図るだけではなく、「お互いに元気を出して頑張ろう」という意味もあるのです。また、上限関係も問わずに行うので、上下関係に溝をつくらない効果もあります。

握手はお互いに励まし合い、一つの目標に向かって協力して、活気ある店づくりをしていくための第一歩だと考えています。手の握り具合の強さ、そしてその時の声の調子、目つきで、相手の体調も元気の度合いも一瞬にしてわかってしまいます。握手をした相手が元気がない場合には、力強く繰り返すことで相手に元気を分け与えることだってできるのです。

店内でスタッフ同士が握手し合う光景を目にしたお客様から、「私にも!」と手を差し出されることがあります。またお客様が両手で私どもの手を力強く握ってくださることもあります。そんな時、「頑張ってる?久々に会えてうれしいよ」、そんな喜びのメッセージが手から伝わってきます。常連客様が中心ですが、お客様との握手は大いにコミュニケーションに役立っていますし、お客様を楽しくさせる一手段にもなっています。

 

エピソードI-2 おもてなし編

ありがとう存じます

コメ・スタでは、お客様に対して「ありがとうございます」ではなく、「ありがとう存じます」という言葉を使っています。お客様はこの耳慣れないフレーズに一瞬!?と首をかしげます。同じ感謝の意を表す言葉も、お客様の心に深く印象づけたいと考えました。

そこで老舗のソバ屋さんで使われていた「ありがとう存じます」を使うようになりました。

うちの店では、いくつかの禁句があります。たとえば、お客様から声をかけられた時は、

×「少々お待ち下さい」→◎「はい、ただいま」

お客様にあらかじめ待たせるようないい方は失礼だからです。

×「わかりました」→◎「かしこまりました」

お詫びの言葉も

×「ごめんなさい」×「すみません」→「申しわけございません」

スタッフ間の会話にも気を配っています。スタッフ同士、名前を呼び合う時には上下関係に関係なく、呼びつけにしている場面というのはあまりいいものではないからです。

お取引様との会話にも気をつけています。たとえば「ご苦労様」とは目上の人や上司に向かって使う言葉ではありませんから、上下関係を問わず、誰に対しても「お疲れ様」を使うようにしています。

 

エピソードI-3 おもてなし編

残った料理は取り分け、時にはお持ち帰りも

テーブルの上に残された料理。その原因は、おなかがいっぱいなのか、それとも味に問題があるのか。お客様同士が遠慮しているのか、店として気になるところです。

そんな時には、「お下げしてよろしいでしょうか」ではなく、「お取り分けしましょうか」と一言かけるようにしています。「お願いします」と言われれば、各自の皿に取り分けます。

意外とお客様同士で遠慮しあって手をつけず、中途半端に残っていることが多いものです。

「お腹いっぱいなので」という答えが帰ってきた場合には、状況に応じて「お包みしましょうか」と聞いてみます。主婦のグループなどでは、残った料理を持ち帰りたいと思っている場合があります。そんな時は、店側から積極的に機転を利かせて「『ドギーパック』にお包みしましょう」と声をかけてみることも時には必要です。常連のお客様などの場合には、新しく焼いたピッツァをプラスして差し上げることもあります。

私達は、こうした配慮を「感動ハイタッチ」と呼んでいます。こうしたひと手間をかけることで、お客様もすっきりしますし、スピード中間バッシングにもつながります

 

エピソードI-4 おもてなし編

イタリア料理店で「盛り塩」「打ち水」

盛り塩

料亭の玄関先などで見かける盛り塩。コメ・スタでは、オープン当初からかかさず、店の入口脇に小皿を盛った塩を置いています。日本古来の「盛り塩」がなぜイタリア料理店にあるのか、不思議に思われるかもしれません。

この盛り塩のことを単なるお浄めの意味だと思っている方も多いようですが、実は平安時代の昔に遡えるストーリーがこの習慣にはあるのです。なかなか訊ねてきてくれない旦那様を待ち焦がれるあまりに、お妾さんが玄関先に塩を盛ったのが最初だといわれています。なぜなら、塩は牛の大好物。家の前に塩を盛れば、塩をなめるために牛が歩みを止める。つまり牛車が家の前に止まって旦那様も会いにきてくれると考えたわけです。そこから転じて、盛り塩には待ち人を呼ぶ=お客様を呼ぶ=商売繁盛という意味が生まれたそうです。

ところで塩の盛り方ですが、カクテルグラスを使うと簡単にきれいにできます。グラスに粗塩を詰め、そこに水を少々かけて湿らせ、小皿をかぶせてそのままひっくり返せば三角すい型の盛り塩のできあがり。

盛り塩はお客様とのコミュニケーションにも大いに役に立っています。たとえばこんなこともありました。席が空くのを待っている子供が、砂遊びの感覚だったのでしょうか、退屈しのぎに盛り塩で遊びはじめたのです。そんな子供のいたずらを詫びるご家族に、盛り塩の由来についてお話したところ、とても喜ばれたことがありました。

また玄関先のテラス部分では、毎日「打ち水」をしています。清潔感や清涼感を演出するだけではありません。本来の意味は、外と内の温度差をなくして、お客様に風邪などをひかせないようにするためという意味があるのです。

こうした古くからのしきたりも形式だけ真似するのではなく、由来をきちんと知っておくことで、お客様との会話も弾みます。私どもの店は料亭ではなくイタリア料理店です。それでもこのようにして日本の古き良き習慣を伝えていければと思っています。

 

エピソードI-5 おもてなし編

ウエイティングリストのお名前は漢字で

漢字ウエイティングリスト

お客様が来店したら、御予約の有無にかかわらず、必ず入口でお名前をお聞きしています。お客様の固定客化、個別対応の第一歩は、お客様のお名前をお呼びすることからはじまるからです。お待ちいただく場合にはウエイティングリストに、すぐにご案内できる場合には伝票にお名前を書きます。「何で名前を書くの?」と聞かれたら「伝票に間違いがあってはいけませんから」とお答えすれば、納得していだたけます。

ウエイティングリストにお名前を記すお店は多いですが、たいていカタカナ。でも、カタカナは本当の名前とはいえません。「お客様のお名前一つ大切にできない店では、お客様を大切にできるはずがない」というのがコメ・スタの考え方。ですから、名前は必ず漢字で、もし漢字がわからなければ、お客様に尋ねます。「漢字の勉強をさせていただきたいので」といったジョークをいえば、教えてもらえるものです。難しい名前には、必ず読みがなも書き添えておきます。皆が正確にお名前を呼べるようにという配慮からです。

時にはとても珍しいお名前のお客様もいます。そんな時、「珍しいですね」というのは失礼ですが、座喜味総支配人は、「私の名前もざきみと珍しいのですが、お客様のお名前もはじめてですね。どちらのご出身ですか?」とさらりと聞き出してしまうのです。

 

エピソードI-6 おもてなし編

ウチワもパレットもメニュー表にしてしまう

お客様を席に案内したら、まずメニューをお渡しします。メニュー表を見た瞬間から、お客様の期待感がぐんと高まっていきます

お客様に愉しんでいただくために、グランドメニュー、ドリンク&デザートメニューの表の他に、季節のお薦め専用のユーモアあふれるメニュー表を用意しています。

たとえば、夏には『ウチワ』。ウチワには小さなメニュー表(あらかじめパウチ加工したもの)を両面テープで張り付けそこに冷製パスタや生ビール、おつまみなどを紹介しています。通常のメニュー表をお渡ししたあとに、このウチワを「店内の冷房が効きにくくなっておりますので、どうぞこれでお涼みください。と言いながら出すと、お客様は思わずニヤリとしてくれることもあります。というのも店内にはピザ窯があるために、どうしても夏期は冷房が効きにくく、このウチワメニューは、実用も兼ねているのです。この他夏には、竹ざるを使ったこともありました。

芸術の秋には、レコードジャケットやパレット、春には卒業証書など。これらのおもしろメニュー表は、既存のものにメニュー表を張り付けたり、その形を模して手づくりしています。 また冬には、大きな手をかたどったメニュー表が登場します。「握手しませんか」とスタッフから差し出された「手」の大きさにお客様はびっくりされることも。実は裏側がメニュー表になっているという仕掛けなのです。寒い冬だから「手の温もり」で暖かさをお伝えしたいと考え、コメ・スタ式の挨拶である握手をモチーフにしたのです。

メニュー表は単なる料理の紹介ツールではありません。「機能性、話題性、物語性」を持たせることによって、お客様のアプローチの重要ツールとなるのです。

 

エピソードI-7 おもてなし編

口紅試食会で「女性客」を疑似体験

口紅試食会

女心を知らずしてサービス業は成り立たない、これは常識です。飲食業であるならば、女性の「舌心」までも知らなくてはならないというのが、私の持論です。

そこでキッコーマンレストラン時代からはじめたのが、「口紅試食会」でした。シェフ、サービススタッフなど男性が口紅をつけて、実際に店の料理を食べてみるのです。男性にとっては、口紅をつけるのはもちろんはじめてのこと。 ところが、我にかえれば鼻につく口紅の香り、そして唇を嘗めてみれば、甘ったるく油っぽい。実際に前菜を食べると、口紅とソースの香りが混ざるなど身をもって体験できます。食事中は慣れてきたものの、食後は3時間も舌が麻痺状態になってしまいました。

実際に来店する女性客は口紅を塗っているわけですから、調理する際には香りや油分には気をつかわなくてはなりません。また、女性客は口紅をつけているため、食べ物やフォーク・スプーン類は唇に触れずに、口の奥まで入る形状、食べ物のカッティングは小さく、先端が細くなったスプーンが好ましいということもわかりました。こうしたことが発見できるだけでなく、こうした試みを通じて、特に料理人には女性の立場で味覚テストを体験し、柔軟性を持ってほしいという気持ちも込めてやっています。

 

エピソードII-1 おもてなし料理編

あっと驚く「玉手箱」デザート

「玉手箱」デザート

女性客の多い店では、デザートはとても重要です。今や3〜4種盛りのデザートは当たり前です。そこで、よりよく見えて価値のあるデザートはないだろうかと考えて生まれたのが「玉手箱」でした。

ヒモのかけられた松花堂弁当の蓋を開ければ、モクモクと煙が…。実は箱の中には、小皿に盛られたジェラートやドルチェの他に、ドライアイスが仕掛けられているのです。まさに浦島太郎の「玉手箱」ワールド。びっくりしたお客様が、「わぁー、歳をとったらどうしましょう」といえば、スタッフは即座に「ご安心下さい。この煙は別府・湯布院の湯煙でございます。お肌がより一層つやつやと若返ります」などとユーモアで切り返したりして盛り上げます。

この松花堂弁当は、厨房の中で眠っていたものでした。以前、ケータリングをしていた時に使用していたのです。この容器が使われずに置かれているのを発見したスタッフが、デザートを松花堂弁当スタイルで提供したらどうだろうと発想したのがきっかけでした。

「お金をかけずに、店にあるモノを利用する」というのがコメ・スタ流の発想の基本です。蓋を開けた時に、数種類のデザートが並んでいたらお客様に喜んでもらえるにちがいない。「中にはドライアイスを置いて、蓋をあけた時に煙が出てきたらおもしろいかもしれない」。箱にはヒモをかけて、いっそ玉手箱にしてしまおうと発想は膨らんでいきました。さらに、お客様に提供する時は、野田市のキッコーマン本店秘書課スタイルを真似してみようと考えたのです。同社の秘書課では、お客様にお茶を出す際に、お茶に息がかからないようにという配慮から、お盆を高くしてお茶をお持ちする習わしがあるのです。

うやうやしく松花堂弁当の箱を揚げたスタッフが店内を歩く様は、注文されたお客様だけでなくても他のテーブルのお客様の目もひきます。そして、スタッフがヒモをといて蓋を開けた時には、お客様から思わず歓声が。容器を替え、ちょっとした工夫をしただけですが、お値打ち感は大きくアップしました。

このデザートは昼のコースのみ、夜は、コース料理のアンティパストの容器としても使われています。